食物アレルギー対策を強化

東京都では7月下旬に、学校などにおける食物アレルギーのある子どもへの新たな対策が発表され、教育現場で順次進められている。アレルギー対策を推進する都議会公明党はこのほど、都立小児総合医療センターのアレルギー科(都内府中市)を訪れ、都のアレルギー対策に尽力している赤澤晃部長(日本アレルギー学会認定指導医)から説明を受け、意見交換した。これには中島幹事長のほか、谷村孝彦、松葉多美子、栗林のり子の各都議が参加した。

新たな対策では、各学校に管理職や養護教諭、学級担任、栄養職員などで構成する「食物アレルギー対応委員会」の設置や、定期的な研修の実施などが打ち出されている。同委員会は、アレルギー疾患のある児童・生徒への対応を検討・決定する機関で、赤澤部長は「ここが、きちんと機能することが大切だ」と強調する。

また、対策の一環で「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」を作成。学校をはじめ幼稚園や保育所などに配布された。マニュアルには、アレルギー症状が出たり、原因食物を食べたことを発見した際の手順が、わかりやすく示されている。

例えば、緊急時の判断と対応について、「アレルギー症状があったら5分以内に判断する!」「迷ったらエピペン(アドレナリン自己注射薬の製品名)を打つ!ただちに119番通報をする!」などと明示。声がかすれる、呼吸がゼーゼーする、繰り返し吐き続けるなどの症状が1つでもあれば、エピペンを打つよう指示している。赤澤部長は「教職員が怖がらずにエピペンを使えるように、研修を重ねることが大事だ」と説明した。

都は、今回の対策を推進するため、8月に区市町村への説明会や、教職員などの研修会を実施。今秋には、各校の実施状況を調査することになっている。

中島幹事長は、昨年12月に都内調布市の小学校で起きた食物アレルギーによる児童死亡事故に触れ、「あのような事故を二度と起こしてはならない」と強調。対応マニュアルの配布数が限られていることから、「全ての教職員にマニュアルを早急に配布し、研修を徹底する必要がある」と強調した。

赤澤部長は「近年、世界的に食物アレルギーが増え、アナフィラキシーショック(急激で重篤なアレルギー反応)の症例も増加している」と語り、今後、期待される「経口免疫療法」について解説。同療法は、アレルギー反応を起こすすべての食べ物を、微量摂取し続け、時間をかけて徐々に摂取量を増やすことで、アレルギー反応が起こらない体質に改善していく療法。赤澤部長は「実用化には数年かかるが、これからのアレルギー治療の主流になるだろう」と展望した。

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