ヤジがとんだ「バレエ」の話

かねてより、日本バレエ協会の方から「国立のバレエ学校が作れないか」との要望をうけていました。というのも私自身、中学生までバレエを習っていた経験があり、現在は娘をバレエ教室に通わせています。バレエなど身体表現の美は、日本舞踊なども含めて、人の心を打つ表現芸術の原点といえます。

バレエ教室は現在、全国で1,5000、東京では2,000教室あるといわれています。バレエダンサーを目指す若者は続々と続いておりますが、その反面、日本には本格的にバレエを学ぶ国立、公立の学校がありません。諸外国には、それぞれ国立または公立のバレエ学校があり、フランスのパリ・オペラ座附属バレエ学校、イギリスのロイヤルバレエ学校などが有名ですが、それぞれバレエ舞踊の総合教育を行っています。個々のバレエ教室の努力の結果、優秀なバレエ人材が輩出されていますが、その多くが海外のバレエ学校に流出してしまっている実態を、日本バレエ協会の方から伺っていたのです。

文化芸術先進都市を目指す東京こそ、国に先駆けて世界に通用する専門性の高い文化芸術の教育機関を創設すべきだ~私の心は決まりましたが、具体的にどう進めていこうか、と考えたときに思い浮かんだのが「都立総合芸術高校構想」でした。私は、そこに、バレエなど舞踊専門の勉強ができる舞踊科あるいは舞台芸術科が設置できないかと思ったのです。

早速、2005年11月には、実際にバレエを教えている現場の意見をお伺いしたいと思い、京都府京田辺市の桧垣バレエ団・桧垣バレエ学園を訪れました。この学園は、日本らしい作品を発信し海外でも高い評価を受けています。代表の桧垣美世子さんをはじめ、先生方との有意義な意見交換の場となりました。桧垣さんは、学校教育でバレエを教える専門課程の創設について、「自分が何に向いているかがわかり、将来の歩みを決めるのにいい時期は、高校生ぐらいだと思います」と話してくださいました。その上で、① 生徒の選考にあたる専門家の選定が難しい② 技術だけでなく、教養を培うため、カリキュラム編成では一般科目の単位も重視すべき、などの課題も率直に述べてくださいました。

そして、初当選した年の第4回都議会定例会で具体的に提案をした時のこと。「バレエ」と話した途端、議場にヤジが飛びました。これまでの都議会では、あまりに馴染みのないことだったのでしょう。しかし提案は実り、現在、都立総合芸術高校は、都立芸術高校を母体として、既存の音楽科、美術科に加え、クラシックバレエを初め、日本舞踊、モダンダンスなど、総合的に学べる学科「舞台表現科」として設置されることになりました。現在、平成22年度の開校へ向け、着々と準備が進んでいます。開校すれば、都立で唯一の芸術に関する専門高校となり、芸術分野で将来活躍したいと夢を描いている子どもたちにとっての希望の道がひとつ、開けるのではないかと思っています。

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