健康な社会とは?
先日、東京大学先端科学技術研究センター バリアフリー分野教授の福島智先生が「ヘルシー・ソサイエティ賞」を受賞され、お祝いに駆け付けさせて頂きました。
福島先生は私と同世代。3歳で右目を、9歳で左目を失明。更に、18歳の時に聴力を失い、全盲ろう者となりましたが、大学進学を決意。周囲のボランティアの方々の支えもあり、全盲ろう者として初めて東京都立大学(現首都大学東京)に合格されました。
更に大学院へと進み障害学を研究。日本初の全盲ろう者の助教授として金沢大学に勤務後、東京大学で博士号を取得され、現在は教員として頑張っていらしゃるというバイタリティーあふれる素晴らしい先生です。
教授は、「全盲ろう者は、“無人島に一人取り残された心境”です。この苦痛から解き放つ支援をお願いしたい」と訴えておられ、何としても日本版「ヘレンケラー・センター」とも言うべき施設を東京に開設したいと都議会公明党が一丸となって議会で取り上げ、ついに2009年5月、「東京都盲ろう者支援センター」(台東区)が、全国で初めてオープンしました。このセンターでは、コミュニケーションなどの訓練や各種相談、通訳・介助者の養成や派遣などの事業によって、盲ろう者の社会参加を後押ししています。
福島先生は授賞式に折に「支援センターによって、生きる希望が生まれ、救われた人がいる」と話してくだいました。そして、私は福島先生から大切なことを学ばせて頂いています。その授賞式でも、感動的なスピーチをされていました。以下、にご紹介させていただいます。
「ところで、『ヘルシー・ソサエティ』とは何でしょうか。たとえば病人のいない社会、従って、お医者さんも必要のない社会なのでしょうか。私は違うと思います。どんな人間でも、人生のどこかで、だれかの手助けを受けているはずです。
ある社会は、それを構成する人たちが全員強くなることを目標にするのではなく、互いの弱さを補い合うことによって、結果的にはさまざまな困難に対応可能な、しなやかで粘り強い社会になるのではないでしょうか。(中略)
健康な社会とは、その社会が柔軟性と多様性を保ちながら発展する社会です。そのためには、その社会の構成員どうしが、身近で具体的な他者の一人一人の人生の尊さに、相互に敬意を払うことが大切だと思います。とりわけ、弱い立場に置かれがちな人、不利な状況に陥ってしまっている人の心とつながる努力が軽視されるべきではありません。そうした営みこそが、健康な社会づくりに結び付くのだと思います。」