大地震に備え新宿駅で滞留者対策を実施
学生ボランティアや地域団体が協力
情報共有のシステムも検証
訓練推進の公明都議ら視察
大地震の発生による交通機関のマヒで、駅周辺に滞留した人たちを安全に避難誘導する訓練がこのほど、東京都新宿区のJR新宿駅周辺で行われた。震災対策を推進してきた都議会公明党の吉倉正美、伊藤興一、松葉多美子の各議員、新宿区議が視察した。
JRや私鉄が乗り入れ、1日で約347万人が利用する新宿駅。都の被害想定では、大地震で同駅の交通機関が寸断されると、足止めされた通勤・通学客ら約17万人が駅やその周辺にあふれ、滞留すると予測されている。われ先にと無秩序に動くと混乱するため、駅から離れた場所へ誘導する人が必要だが、人命救助を優先する消防など行政職員は手が回らないと予想される。
そこで都や区、同駅周辺の大学、デパート、商店街振興組合などが昨年、協議会を立ち上げ、1月には地元商店街関係者らが誘導役となる初の滞留者誘導訓練を実施。今回は、その結果を踏まえて、正確な行動につなぐ災害情報の把握と周辺大学の協力体制に重点を置き、会員38団体、約2200人の参加で訓練を行った。
視察団一行は、災害情報を集約する現地本部が設置された工学院大学で、災害情報の受発信訓練を視察した。東京湾北部で震度6クラス以上の地震が発生との想定で開始。現地本部には続々と、広域の被災状況や鉄道の運行情報などが集まった。区内外の医療機関や大学、情報関連企業などと協力したことで、最新のシステムを駆使し各地の災害情報を共有。パソコンの地図上に入力して大型モニターに映し出す試みも行われた。
また、一行は大学構内に仮設された応急救護所で、学生ボランティアが、けが人の搬送やトリアージ(けがの程度から治療の優先順位を付ける)に協力する様子も視察した。
訓練を終え、新宿区の藤林文男・区長室危機管理課長は「現実に近い訓練で、大学などとの協力が大切なことが確認できた」と強調。今後は「災害情報の重要度を色分けする“情報のトリアージ”が必要だ」と語った。
都議会公明党は、震災対策を一貫して推進。2006年2月の定例会では、滞留者対策を「早期に検討すべき」と訴え、「企業、事業所などの間での協力体制が喫緊の課題」と提案。1月の訓練後の08年3月の予算特別委員会でも「今後の継続実施が極めて重要」と主張していた。
(公明新聞2008年11月12日)